徳洲会グループは、放射線診断専門医のいない病院で的確に画像診断するため、遠隔画像診断を積極的に推進する。10年以上前から遠隔診断を行っている札幌徳洲会病院をロールモデル(手本)とし、同院が作業効率の向上を狙い昨年導入した新しい遠隔診断システムを他院にも整備する方針だ。まず11月に、離島病院の遠隔診断を実施している東京西徳洲会病院や中部徳洲会病院(沖縄県)、南部徳洲会病院(同)に導入し医療の質向上を目指す。

札幌徳洲会病院がロールモデル

CT(コンピュータ断層撮影)やMR(磁気共鳴診断)などの検査装置で撮影した画像を、遠隔地にいる読影医(検査画像の診断を専門とする医師)が診断することを遠隔画像診断という。

札幌病院は10年以上前から帯広徳洲会病院、札幌南青洲病院、静内病院(ともに北海道)の遠隔診断を実施し道内の医療の質確保に寄与してきた。

しかし、年々増加する読影需要に遠隔診断システムが追いつかなくなったため、2011年6月に徳洲会インフォメーションシステム(TIS)が企図した新システムを導入。

新システムにはさまざまな業務効率化の工夫が施され、読影スピードが大幅に向上した。それとともに診断数も増加し、札幌病院では昨年1年間で2人の放射線科医が2万6543件を診断、うち3分の1は他院からの依頼だった(図)。本年は8月末日時点で1万8990件と、昨年よりハイペースで診断数が伸びている。

「新システムでは、こちらが出した要望のほとんどを叶えてもらいました」と、同院放射線科の片田竜司部長。

通信速度の高速化に加え、片田部長が要望したのは以下の3点だ。①1つのシステムのなかで、全病院から依頼された画像を管理・読影できる(これにより1画面で全病院の依頼が時系列順に閲覧可能)、②画像を札幌病院に送るのではなく、読影医が依頼してきた病院のサーバにアクセスして画像を参照できる(これにより過去の画像の閲覧も容易になり、個人情報の拡散防止にもつながる)、③フィルムによる検査画像や紙の検査依頼書を電子化する─がそれらだ。

こうした工夫により、“ 遠隔”であることの作業上のストレスが大きく軽減した。

「従来は読影依頼をFAXで行っていたため、管理もたいへんでした。いまは、読影端末(パソコン)上で簡単に管理することができます」と片田部長は新システムの利点を説く。

連携先との交流が大切にグループ病院の強み発揮

新システムの有効性が確認できたことから徳洲会は他病院にも導入を推進。11月には、沖縄県や鹿児島県の離島病院の遠隔診断を実施している東京西病院や中部病院、南部病院に導入する予定だ。

片田部長は、「遠隔診断のように連携が必要な業務こそ、徳洲会のグループとしてのメリットが生かせます」と強調する。

たとえば帯広病院の棟方隆院長は以前、札幌病院で勤務していたことがあり、同院の遠隔診断開始のきっかけをつくった。「帯広病院新築時に購入したCTについてきた画像処理システムを、無理を言って譲ってもらいました。フィルムレス化に憧れていたのです」と片田部長。それ以来、帯広病院の検査画像を遠隔診断することになったという。

このように連携先との親密な関係があるからこそ、画像診断を依頼してきた病院の画像が鮮明でないときに電話で確認したり、逆に依頼病院からも診断内容に疑問がある際に質問をしたりすることが気軽にできる。

「人手の足りない病院にグループ病院から職員が応援に行く体制や転勤を通じ、他病院の医療従事者と個人的なつながりを持てることは、徳洲会の強みのひとつだと思います」と、片田部長はアピールしている。

徳洲新聞2012年(平成24年)10/15  NO.847 より