コスト減で治験増に期待 東京と大阪で各院の電カル閲覧

徳洲会グループは新たな治験ネットワークシステム「リモートSDV(Source Data Verification)」の運用を1月15日から開始する。

これは、(株)未来医療研究センターの本社(東京)と大阪オフィスに専用ルームを設け、そこに設置した端末(パソコン)から各病院の被験者さんの電子カルテ情報へのアクセスを可能にするもの。徳洲会インフォメーションシステム(株)の協力の下、実現した。

リモートSDVにより治験の依頼者(製薬会社)は、治験に要するコストや時間を大幅に削減できるのが最大の特徴。徳洲会グループはこうしたメリットをアピールし、治験の受託数増加を目指す。

SDVとは製薬会社のモニター(調査員)が行う「原資料の閲覧」をいう。具体的には、治験の実施施設である病院が作成した症例報告書などと、被験者さんの電子カルテ情報との照合を行い、治験実施の適切性やデータの信頼性などを検証する。

従来、こうした作業はネットワーク化していない場合、直接病院に足を運んで行っていた。しかし、東京、大阪から遠く離れた病院で治験を行う場合、モニターの出張費用や時間がかかり、コスト増となっていた。

徳洲会グループは全国各地に病院を展開し、東京、大阪から遠く離れた地域にも多数の施設をもつため、「遠隔地のハンディキャップを軽減し、治験を実施する施設として、徳洲会グループの価値を高めるために、リモートSDVを企画しました」と、未来医療研究センターの山路弘志社長は12月22日の徳洲会医療経営戦略セミナーで説明。

さらに都市部の病院にとっても、モニター来院時の対応業務の軽減といったメリットが期待できるという。

リモートSDVのシステムは、未来医療研究センターの東京・大阪の両オフィスにそれぞれ2部屋ずつ設けたリモートSDV実施室に設置した端末から、対象施設に設置した専用サーバを経由し、電子カルテ情報を閲覧するという仕組みだ。

電子カルテの閲覧には、入室前の本人確認、入室用のIDとパスワード、対象施設のサーバにアクセスするためのIDとパスワード、さらに電子カルテにアクセスし閲覧するためのIDとパスワードの入力が必要。

室内は監視カメラも設置し、厳重なセキュリティ管理の下、患者さんの個人情報を万全の体制で保護している。

電子カルテは閲覧のみ可能で、カルテ情報の改変は一切できない。だが、病院を訪れているのと同じように、パソコンの画面を見ながらの作業が可能だ。

今回誕生したリモートSDVによる大規模な治験ネットワークシステムは、グループ内で同一の電子カルテシステムを導入し、治験システムの標準化も図っている徳洲会だからこそ実現できた。現在、北海道から沖縄まで徳洲会グループの21病院に専用サーバを設置済みで、当面はこの21病院を対象にシステムを運用していく。

製薬会社向けにこれまで2回開いた説明会には、合計で約200人が参加し、好評だ。製薬会社からのニーズが多ければ、リモートSDV実施室の増設も検討するという。

徳洲新聞2013年(平成25年)1/14  NO.860 より