八尾徳洲会総合病院(大阪府)は、運用中の安全で効率的な手術をサポートする「手術管理システム」と電子カルテとの連携を、3月をめどに開始する。手術に用いたすべての医療材料の使用実績データを自動的に電子カルテに反映させるのが狙い。手術室スタッフがデータ入力を行う手間が省けるなど、よりいっそう業務の効率化を図ることができる。

医療材料のデータ入力自動化

手術管理システムは、手術に使用する医療材料の在庫管理、使用状況・実績の把握とその情報の蓄積、使用状況に応じた迅速な自動発注、手術ごとに医療材料を集めるピッキング(選んで取り出すこと)作業の補助などを担う。同システムを利用することで、手術室の稼働率や手術の原価情報、収支の予測と実績などを簡単に算出できる。

しかし、使用した医療材料の電子カルテへのデータ入力は手術室の看護師が行っており、多くの手術を担当するなかで負担となっていた。今回、同システムと電子カルテを連携することで、「改めてデータ入力する必要がなくなり、看護師さんは看護業務に集中することができます」と、2009年の同院新築移転時に手術室の責任者を務めた谷仁介・麻酔科部長は期待を寄せる。加えて、保険請求などの医事業務の効率化にもつながる。

手術管理システムを構成するデジピック(デジタルピッキング)は手術の安全と効率の両面に大きく貢献している。具体的には、専用のタブレット型の端末を用いて、登録された手術一覧から手術名を選択すると、その手術で使用する材料が置かれた保管棚のランプが、必要な数量表示とともに点灯する仕組み。

同院では約1000種類の材料を常備。人手により必要な材料を迅速・正確に集めるには、熟練した作業が求められる。しかし、谷部長は「デジピックの導入により、仮に取り漏れがあったとしても一目瞭然です。熟練者でなくても手術に必要な材料を正確かつ迅速に集めることができます」とメリットを強調する。

また、手術室の八鍬貴則・看護部主任は、「電子カルテの連携と同時にシステムをバージョンアップします。これにより、術式に応じて必要な手術スタッフの人数や経験を考慮した采配がよりスムーズに実施できるようになります」とアピール。

システムの導入とその改善を重ねた結果、同院の手術件数は年々、右肩上がりで推移している。同院が新築移転した09年の月間平均は約250件。10年は約321件、11年は約337件、12年(11月までの平均)は375件と着実に増加。

同院は安全性も追求している。7室ある手術室の状況をリアルタイムでモニタリングし、1週間分の映像記録を残すNVR(ネットワークビデオレコーダー)システムを構築。麻酔科医局に60インチのモニターを設置し、患者さんの生体情報なども含めて可視化した。「手術管理システムとモニタリングシステムは、手術を安全で効率的に実施するための車の両輪にあたり、いずれも欠くことのできないものです」と谷部長は力説する。

将来的には、安全性や効率性をより高める方策として、体内への置き忘れ防止のためのICタグ付きガーゼや、手術室に出入りする職種や人数、高額医療機器などを瞬時に把握し、手術計画の作成やより詳細な原価計算などに役立つRFID(タグに記録された情報を電波で認識するシステム)の導入を検討する。

徳洲新聞2013年(平成25年)2/25  NO.866 より