徳洲会透析部会は3月11日から2日間、医師、看護師、臨床工学技士ら約100人が集まり、全国会議を開催した。会議では電子カルテ情報と透析情報の一元管理を可能とするグループ標準の新透析システムを構築する方向で一致。実現すれば透析医療の質のさらなる向上や業務の効率化が期待できる。このほか感染症対策や水質管理体制、医療安全に加え、腎移植や徳洲会グループが力を入れているアフリカでの透析センター開設支援の取り組みなど、多岐にわたるテーマで情報共有や討議を行った。

4700人のビッグデータ活用
全国の徳洲会病院から多くの透析医療関係者が集結 全国の徳洲会病院から多くの透析医療関係者が集結

会場は滋賀県草津市にある医療機器メーカー、ニプロの医療研修施設「iMEP」。徳洲会グループは、透析センターの開設を目指すアフリカ諸国の医療スタッフを日本に招待し、グループ病院で研修を行ったり、ニプロの協力を得て同施設で透析機器を使用し実技研修を実施したりしている。グループ病院の透析医療関係者が同施設を見学する機会を設ける狙いもあり、今回、同施設を会場に選定した。

透析部会の部会長を務める小林修三・湘南鎌倉総合病院(神奈川県)副院長は開会挨拶で、「これから透析が始まる患者さんに対して『かわいそうだね』と言う人がいますが、この見方には反対です。透析の導入は人生の終わりではありません。一定の制限はありますが、よく食べ、よく身体を動かし、新たなことにチャレンジしていただく新しい生活のスタートなのです」と持論を披露。

「ガイドラインを確認し安全管理を徹底してください」と小林副院長 「ガイドラインを確認し安全管理を徹底してください」と小林副院長

続けて「ここであらためて、ガイドライン(日本透析医学会)をふまえた安全管理の徹底、十分な透析、十分な栄養摂取による患者さんの生活の幅の拡大という当たり前のことを考えてほしいと思います」と活発な討議を求めた。

全国会議では、グループ標準の新透析システム(徳洲会標準透析システム)の構築に向けた議題が注目を集めた。徳洲会は現在、複数メーカーの透析システムを導入。このうち主に透析ベッド数の多い病院に導入されているニプロの高機能透析システムは、電子カルテと透析システムに、それぞれ患者さんの情報や透析データなど診療情報が散在し、一元管理できていないことが課題。

徳洲会インフォメーションシステム(TIS)の髙橋則之・導入管理部部長が現状の透析システム稼働状況や新システムのイメージ案、システム構築に向けた体制、スケジュールの概要などを説明。このあと、湘南鎌倉病院や新庄徳洲会病院(山形県)が自院での透析システムの運用状況、ニプロの担当者が透析システムの紹介などを行った。

各演者が登壇したパネルディスカッションでは「徳洲会のグループ病院で透析医療を提供している患者さんは約4700人(1カ月間の透析件数は累計6万2000件)にも上ります。このビッグデータを集約して分析、活用すれば、世界の医療を変えることができるでしょう」などと期待感が高まっていた。

徳洲会臨床工学部会の部会長を務める本間久統・庄内余目病院(山形県)臨床工学科技士長が参加者の意思確認を行った結果、満場一致で推進する方向に決まった。計画では透析部会内にプロジェクトチームを設置し、月1回程度の会議を行い、最終仕様確定後、早ければ年内にもパイロット病院に試行的に導入する。

医療安全に関しては湘南鎌倉病院、札幌東徳洲会病院、中部徳洲会病院(沖縄県)の3病院が、透析室での安全確保の取り組みを紹介。透析室の感染対策では、事前に実施したインフルエンザ対策、抗インフル薬の予防投与の有無や投与基準などアンケート結果を紹介。

シャント(血液透析に十分な血流量を得るため動脈と吻合(ふんごう)した静脈) 穿刺(せんし)部の感染予防に関する指導も行った。討議の結果、予防投与についてグループ統一の基準をつくっていくことが決まった。会場からは、大規模病院の透析スタッフ人員算定に関して、患者数に重症度を加味した算定方法を提案する意見が挙がった。

アフリカでの透析医療推進では、小林副院長が支援状況を発表し、今後アフリカでの腎移植実施に向け、まずタンザニアで腎移植を含む腎疾患総合診療プログラムの樹立を目指す構想を紹介した。

このほか、透析患者さんの化膿性椎体(ついたい)炎の解説、iHDF(間歇(かんけつ)補充型血液透析濾過(ろか))やオンラインHDF(血液透析濾過)の実施状況、湘南鎌倉病院の腎移植の取り組み、透析用水の一元管理の重要性を訴える発表などがあった。初日の最後にⅰMEPを見学した。

徳洲新聞2017年(平成29年)4/17  NO.1078 より