徳洲会インフォメーションシステム(TIS)はAIを活用した次世代医療システム「Aiカルテ構想」を明かした。これは患者さんの既往歴や主訴、画像・検査データ、文献データなどを使い総合的に診断をサポート、最適治療の選択支援を行うものだ。尾﨑勝彦社長に同構想について聞いた。

「AIは病院運営になくてはならないものに」と尾﨑社長 「AIは病院運営になくてはならないものに」と尾﨑社長

AIは言語、画像、音声、制御、最適化や推論――を扱うものに大別される。「言語」は、読み込んだ文章を解析することで、カルテ中の単語を構造化したデータに置き換えることなどが可能になる。「画像」は、たとえば内視鏡画像から、がんを識別したり、胸部X線画像から異常陰影を発見したりできる。「音声」は、患者さんの問診音声を認識し文章に変換。「制御」は、内視鏡下手術支援ロボット「ダヴィンチ」のロボットアームの制御などに役立つ。

そして尾﨑社長は「今後、肝になるのが“最適化や推論”の分野だと考えます」と強調。これは複雑な課題を解決するための推論エンジン的な役割を果たすAIだ。

「Aiカルテ構想」は、この「最適化や推論」を扱うAIを電子カルテに組み込んだもの。患者さんの問診音声を文章化して構造化するAI、画像診断・病理組織診断をサポートするAI、文献データを検索するAIなどの機能を、電子カルテ上に集約することで、医師の診断を助け、さらに文献や治験情報などの検索から最適治療の選択支援もする。

尾﨑社長は「画像を扱うAI、音声を扱うAIなど、それぞれの分野で実証実験が進められたり、すでに実用化されたりしています。これらを合体させ、ひとりの患者さんを多角的にサポートすることが、次世代の病院システムになると思います」と説明。さらに「徳洲会は“いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会”を目指していますが、AIを用いることで、より“最善”に近づくことができます」と胸を張る。

AIは職員の負担軽減にも寄与する。たとえば患者さんが来院前にスマートフォン用アプリを使い、自分の病状について、かかるべき診療科や緊急度などを確認できれば、受け付けでの対応がスムーズになり、待ち時間の短縮にもつながる。「スマートフォンの保有率は年々増加傾向にあります。時代に合わせたシステムを構築することが大切です」(尾﨑社長)。

また、患者さんの住所をマッピングし、地域の天気予報やインフルエンザの感染動向など、各種データと合わせれば、外来患者数の予測も可能になる。これにより職員の配置を最適化、ムダが省け経営改善にもつながる。

今後の課題として「カルテの文言の構造化」を挙げる。たとえば医師により「糖尿病」と記したり「DM」と記したり、記述に違いがあると、ビッグデータを活用しにくい。このため現在、札幌東徳洲会病院救急科でテンプレートを用い電子カルテに来院時所見を記載する実証実験を始めているところだ。

尾﨑社長は「医師の協力がないと徳洲会のAIの進歩はありません。AIは今後、病院の運営になくてはならないものになると思います」と意欲的だ。

徳洲新聞2018年(平成30年)9/3  NO.1149 より